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あなたがいない世界

02

​小暮香帆インタビュー

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(M-laboratoryに小暮さんが参加されてから今回が2作目となりますが、

ご自身でソロを上演されたり、他にも様々な分野のアーティストと共演される中で、

カンパニーとご自身の活動との違いがあればお聞かせ下さい。)
 


やっぱり単純に稽古場に色んな人がいて、三浦さんの振り付けがあって、場を共有する人がたくさんいるから、楽しいです(笑)。

 

(来月上演される「あなたがいない世界」のクリエーションが

始まってからの感想など聞かせてもらえたらと。)

 

ここまで「いないもの」にフォーカスを当てていることってあんまりないと思うので、うーん、そうですね。いつもの参加する感じとはちょっと違う感じがする。

 

(いつもの感じと違うというのは?)

 


 

例えばグループの作品があったとして、それに自分が出るとなると、自分の役割が「私」っていうところから生まれている動きとか、からだとか、作品の中での居方とかがあると思うんですけど、それが今回のリハーサルでは自分自身がいない人とかいないものにフォーカスを当ててるから...。なんだろうな、自分から発するっていうよりかは、自分のからだを通して「いないもの」を発しているというか「いないもの」を作っていくという感じがするんです。なんか通過点みたいな感じする。そこがちょっと違うかなと思います。

(自分のからだが通過点に?)
 

その、なんだろう。お客さんがいて、「いないもの」があって、その間の感じがする。そこが今までにあんまりないというか。

 

(今までだとそういう感覚はなかった?)

 



今までだと、お客さんがいて、自分のからだがあって、空間があるという感じ。その空間があるっていうことを提示している感じがするんですけど、今回はなんだろうな。お客さんと空間を共有するっていうか、お客さんも取り込んでいくっていう感じ。その「いないもの」に、こうぎゅっと濃縮されるというか。空間というよりかは、ここにいないものというか。そこには、具体性というかちょっと生もの感がある。何かその「いないもの」に対して、体温とか、生きてる感じがするというか、無機質じゃなくて、よりこう有機的なものなんですよ。その「いないもの」っていうのが。今まではそこまでは感じられていなくて。空間っていうものがあるとしたら、それがぎゅーっと集まって、いない存在の具体的な何かになってる。すごく抽象的な話なんですけど、空間に濃淡がある感じがするんです。

 

(空間を構成しているものに濃淡があるということ?)

自分の中では濃淡になってますね。「いないもの」を具体化するにはどうしたらいいかって考えながら、クリエーションが進んでいくと、空間の中にどこかすごく濃い部分があったりするんです。

 

(強くフォーカスされているっていうこと?)

そうなのかな...なんの濃淡かわからないんですけど(笑)。例えば、空間が霧だとしたら、その霧がたくさん集まって、今にも水の塊になりそうなところがある感じ。煙だったとしたら、煙が集まって形が見えそうになる。でもまあ、形になりそうなところ以外も薄く霧や煙がかかっているけど、明らかに濃淡が違うイメージなんです。そういう空間になった時に自分と他の人のからだがあって、そこでどう作り出していくのか、どう見えるのか、どうその空間が生まれていくのかみたいな。これまでとは違うフォーカスの当て方に挑戦している感じがします。

 

(これまでと違うっていうのは具体的には?)

 


 

違うと言っても、無意識のうちにやってたのかもしれないんです。今まで踊っていて、思いあたることはあるんですけど、無意識だったことを意識化する、ちゃんと意識するっていうのが初めてだったかもしれない。だから、今までもそういうことばっかりだったのかなと思ってるんですよ。知らないうちにわかっていることを、知らないうちにやってしまっていることを、あえてちゃんと取り出して知っていくっていう感じが今回はしています。だから、なんだろうな。ある意味懐かしいような新しいような感覚。そんな感じがします。もう一度自分のからだとか考えとかを見つめ直す機会になっていますね。

 

(本番に向けて1ヶ月を切ったところで、ここからさらに色々なところが深まっていくと

思うのだけど、楽しみな点とかありますか?)
 


どうなっていくのかまだ全然わからないので(笑)、全く読めないから。でもそういう全然わからない状態から、三浦さんがどう一つの作品にまとめていくのか、どうなっていくのか楽しみです。

 

(単純な質問なのですが、ダンサーとして自分の作品を自分で踊る時と、

カンパニーメンバーとして踊る時の違いとかあるんですか?)
 

ソロだと道標じゃないけど、そういう決定を自分で決めていかないといけない。例えると、雪かきをして進んでいくみたいな。でも、M-laboでやると動くことというか、ダンサーとしてのからだを使って踊るっていうことに比重が大きくなるっていうか。もちろん道標とかは自分で探さないといけないんですけど、他の人がそれを作ってくれていることでわかったりすることがあって、そこがソロと違いますよね。その部分で比重が変わってくるから、よりからだを動かすことが楽しくなるという感じがします。楽しさの種類がソロの時と違うのかな。サッカーで例えるとPKが楽しい人と、パスをして、ファウルがあって、コーナーキックがあって、フリーキックがあってっていうのが楽しい人。後者は一人でできなくて、そういう楽しさの違いかな(笑)。

 

(ソロはPKに近いんですね(笑)。)

ソロはPKに近くて、しかもゴールキーパーがいない感じ。素振りとか...ある意味実在しない何かに向かって何かしようとしているのかもしれない。けど、他に人がいた場合、もっとできることが増えるというか、やれることが増える。この時に自分が浮いたらなと思ったら、グループだと誰かに持ち上げてもらったり、引っ張ってもらったり。いることで頼りになることだと思う。そこが全然違いますね。もしかしたら、ソロより楽しそうに踊ってるかも(笑)。

 

(ソロとは違う楽しさを味わう小暮さんにも注目ですね。では、最後に。

このインタビューを読んでくれている方達にメッセージを。)

 

そうですね...この作品を見た後は、誰かに会いたくなるんじゃないかと思います。なので、皆さんそれぞれの想いをその人に届けたくなるような感覚になるように頑張ります。多分絶対に誰かに会いたくなると思う。

それが生きている人なのか、この世にいない人なのかわからないけど...。多分あたりまえのことなんですけど、大事な人って一人ひとり違っていて、それは見た人にしか体感できないものであると思います。見に来てくれた人が「この作品は自分のために作られたんじゃないか。」と思えるぐらい、そしてその時に誰かを思い出して欲しいと思います。だから、その思い出すきっかけみたいなものになれたらいいなと思います。

小暮香帆 Kaho Kogure

1989年生まれ。これまで笠井叡、笠井瑞丈×上村なおか、三浦宏之、Dance Theatre LUDENS、岩渕貞太などの作品に出演、国内外のツアーに参加。日本女子体育大学卒業後、ソロ活動を開始。ソロ公演「遥かエリチェ」「ミモザ」を上演。また様々なアーティストとのセッション、映画、MVへの出演など活動は多岐にわたる。

第2回セッション・ベスト賞受賞。横浜ダンスコレクションEX2015 コンペディションⅠ 奨励賞受賞。

'17年踊る。秋田 土方巽記念賞にてディレクター賞受賞。第6回エルスール財団新人賞受賞。

めぐりめぐるものを大切にして踊っている。http://kogurekaho.com/

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