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M-laboratory「Moment of motion」

上村なおか × 三浦宏之 対談

M-laboratory 「Moment of motion」の上演まで1週間を切りました。出演者と公演のプログラム・ディレクションをつとめる三浦宏之との対談もいよいよ最後の出演者に。対談最後を締め括るのは、これまでもM-laboratoryの作品に数多く出演してきた上村なおか。

長く国内外で自身の活動を続けてきた上村と三浦による対談。本ページではその冒頭部分のみ掲載いたします。

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三浦:なおかさんとの対談は何回目になるんだろう。今回もよろしくお願いします。

 

上村:よろしくお願いします。

 

三浦:今回エムラボとしては初めて、それぞれのダンサーにソロ作ってもらって公演することになった訳ですけど、私にとってはテーマをお渡ししてダンサーの皆さんに作ってもらう、ということが自身のクリエーションということにあたると考えています。今回、エムラボで初めてのソロ作品上演という状況をどのように感じていらっしゃいますか。

 

上村:普段のソロのクリエーションでは、まるっきりゼロから作るっていう感じでやっているんですが、今回はそうではなく、三浦さんから与えられたテーマがあって、それについて作品をつくるというところがなかなか難しいっていうかな...(笑)。

 

三浦:私が作品を作る場合は、今現在の自分の状況とか、何を考えているか、何を感じているかというところで、自然発生的にテーマみたいなものが浮かんでくるんですよね。今回は、私から一つのテーマで踊って欲しいとお願いすることで、なおかさんの時間軸、現在の時間軸と少しズレというか、なおかさんの中から自然発生したものではないところにあるのかも知れない。テーマ先行でダンスを作っていくことにどういう難しさがあるのでしょう。

 

上村:今おっしゃったみたいに、自分で作る時は自然発生的に、衝動が先にあって、衝動の中からこういうことになっていくっていう感じなんですけど、今回はテーマがあるので、そのテーマへの光の当て方が無数にあって、そこが自分とどう繋がりを作るかっていうところの難しさが...嫌な難しさでは全くないんですけど。考えれば考えるほど、どのようにそのテーマと関わるかっていうところが難しい。タイトルを決めた時に、プランというか、一応「こういう感じでいこう。」と思ったものがあるんですけど、その後生活していると、色んなことが起きたり、あとまあ、自分の人生の時間軸を振り返ってみたりしても、色んなことを思いだしたりして、貰ったテーマをどの角度から見るかっていうところで、またもう一回枝葉が伸びて分かれてきている感じです。でもそれは良しと今はしていて、そのことをやめて最初のプラン通りにいこうっていう風にはまだ決めていなくて、一回その辺りのことも考えて、一巡りして、最終的にどういうことになるかな、と思っています。もう10月も終わりだというのに(対談収録日10月31日)まだなんかこう、色んなことが駆け巡っているというか。でもそういう状態を嫌がっている訳ではなく、色々なことを思い出したりしていく中で、どこかで繋がっていくのかなとは思っているんですけど。その繋げ方というか、方法を探し中かなっていう感じですね。

 

三浦:人ってさ、生活している中で、何かを思い出す瞬間って意外と多いと思うんですよね。思いだしながら現在を計っているというか。今回のテーマを聞いた時に、一つのワードとして一番強く出てくるものって「記憶」っていうところがあると思うんですよね。踊りを踊るにあたって、私自身が作る時も、それまで生きてきて、色んな情報とか、経験とか、体験とかあって、それらがからだの中に無意識のうちに蓄積されていてさ「これを作ろう」「これを踊ろう」「こういう踊りを踊りたい」ってなった時に、その無意識に蓄積されている記憶とか体験みたいなものが、テーマに向かって新たに生まれてくる、もう一度からだの中で生まれるというか、記憶が再生されるみたいな感じがあると私は思っていて。踊りを踊るっていうことと記憶って、一番コミットしていることなんだろうなと思うんですよね。その人がからだで経験していることが記憶になっていて、その記憶が現在のダンスを作っているということ。テーマとの関わりのことで、なおかさんの話を聞いていて思ったところですね。踊っている時に記憶が蘇ってくるっていう訳ではないと思うんですけど、いつも、なおかさんの踊りを見ていて、さっき衝動っていう言葉が出たんですけど、なんていうんだろう...これ語弊があったら申し訳ないんですけど、私がなおかさんの踊りを見て感じることって、ダンスそのものを見せている訳ではないのかなと、少し思ったりするんですよね。ダンスを踊るからだの先に、あるいはからだの中にある何かを私は見ている気がするんですよね。それがさっき言っていた、その瞬間に湧き起こる衝動みたいなものなのかなとも思ったんですけど。非常に難しい質問かも知れませんが、なおかさんは踊り続けることで、何を現しているんでしょうか?

上村:何が踊りかっていうのが、また難しくもあるんですけど...

 

三浦:何を伝える、あるいは表現するでもいいんですけど。

 

上村:この間、笠井瑞丈×上村なおかでやっている「ダンス現在」という企画でソロを踊った時に、終演後の感想で「ダンス現在っていうよりは、なおか現在だった。」って言われたんです。踊るからだとか動きを見せようっていうのは多分あまり無くて、それをかたち作っていたり、成り立たせていたり、それを支えている何かがあるかどうか、というところが自分にとっては切実なので、じゃあそれは表現してるかっていうと...何か現れればいいなとは思いますけど、でも説明的になるものではないので。この間、構成も振付もしっかりされたある舞台を見た時に、その動きを見ているけど、エネルギーを感じているんだなっていう感じがすごくして。自分はその感じがすごく好きで、見ているものは動きだけれど感じているのはエネルギーっていうのは、自分にとってもそうかなって思いました。

以降、対談全文は書籍「こぼれおちるからだたち」に収録されています。

書籍の詳細は特設ページをご覧ください。

「こぼれおちるからだたち」特設ページ

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