あなたがいない世界

「いない」とはどのような状態のことを指して語られているのか。

皮肉なもので「いない」という状態にあるもの自身は、自分が「いない」という状況にその身を置くことができません。
その状況にその身があれば、それは「いる」ということですから。

ならば「あなたがいない」という現象そのものを、作品として提示することで、その状況に「いないあなた」に、自分が「いない」という状態を体感してもらうことが出来ないだろうか。

そのような思いが、この作品を創らせてきたのだと思います。
そしてそれは、作品世界の中に「自身を見る」という状態へと昇華されてゆくのではないかとも考えています。
また、作品を創り進めるにあたり上記のような想いだけでなく、さらに別の形として存在する無数の「不在」という現象が、世界には満ち溢れているのだということに気づかされます。

「あなたがいない世界」は「あなたがいる」という事実を証明するための、反転世界として存在しています。
「いない」という「不在の存在」を、客席に座るあなたのからだが、既に証明しているように。