あなたがいない世界
03
笠井瑞丈インタビュー
(2017年のMoratorium endの上演の時にもお話聞いたことがあるんですけど、瑞丈さんにとって
M-laboratoryで踊ることっていうのは。)
【笠井】派遣や契約社員みたいな感じだからね(笑)。
(そう感じている部分をもう少し詳しくお願いします。)
【笠井】まあ実は、三浦さんと今回出演していない丸さん(丸山武彦)を除けば、今っちゃん(今津雅晴)が今回の出演者の中では一番古くからM-laboに参加しているんですよ。そして、今っちゃんに続いて俺はNo.2な訳ですよ。ついに私がこのカンパニーのNo.2になったわけですよ。ホストクラブでいうとNo.2って結構なものですよ。もうNo.1が見えてきたんですよ(笑)。
(狙っているんですね、No.1を(笑)。)
【笠井】そう。創業者が二人(三浦宏之と丸山武彦)がいるとして...、さいさい(斉藤栄治)、かねやん(兼盛雅幸)、秀ちゃん(鈴木秀城)もいるけど、そこは置いておいて(笑)。今僕がNo.2で、まもなくNo.1(笑)。頑張ります。
(No.1を目指して頑張ると(笑)。M-laboratoryは結成から今年で20年を迎えますが、他の振付家の方達とM-laboratoryのメンバーとして一緒にする時の違いみたいなところはあるんですか?)
【笠井】M-laboでする時は、ちょっと所属してる感じがあるんじゃないの、やっぱり。一応ね、派遣社員とか契約社員とかみたいな。他の方だと、他社。他社っていうのは他の会社っていうことね。他の組織っていう感じがあるかな。まもなくNo.1ですからね、頑張りますよ。兼盛先輩(兼盛雅幸)もさいさい(斉藤栄治)もいるからね、重鎮クラスの方々が。でもまあ、No.1を目指しますよ。
(「あなたがいない世界」の上演が近づいていますが、リハーサルをしていく中で感じていることなど、お聞かせいただけますか?)
【笠井】未知数ですよねぇ...どういう作品なのか(笑)。これどうなるの?っていう。でもそれがいいんじゃないんですか?やっぱし、三浦さんは秘密主義者だから。なんて言うんだろう...
【三浦(メンバーとの中断して話に乱入)】そこらへんどうなんだろう?ずっとそう言うけどさ(笑)。全然秘密主義じゃないよ!
【笠井】ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃう(笑)。意外とね、その辺は俺もわかってるの。その秘密主義の感じをよくわかってる。だから聞かないの。
(聞かない?いつかわかるんですか?)
【笠井】いつかっていうか、本番にわかるんじゃないですか?なんて言えばいいんだろう...いい意味でですよ、作品に深入りしない!と。しない方がいいんですよ。という感じかな。
(それは三浦さんだからですか?)
【笠井】そう。だからね言われたことを「はい。はい。」ってやるっていうのがいいわけ。ここはどういう意味があるのとか、ここはどういうことなのとか、そう言うことは聞かない。例えば、他の方と一緒にやる場合だと結構聞くんだよ。もうちょっとね。ここはどういう感じなの?とかさ。
【三浦(再びリハを中断して)】聞いてね!どんな感じなの?って(一同笑)。言葉って強いから...でも、聞いてくださいよ。
【笠井】(笑)言われたことを「はい。はい。はい。」って淡々とやるっていうのがここの良さじゃないんですか?
(本番の日にはなるほどって思うんですか?)
【笠井】思う思う。あ!ここでこうなってるんだ!!っていう。
(なるほど、本番の日に全てがすとんと腑に落ちてくるみたいな感じでしょうか。本番の日にわかるっていうことはリハーサルをしていく上で不都合みたいなことはないんですか?)
【笠井】あんまりない。俺はね(笑)。不都合があるとしたら、自分の問題ですよね。振りが覚えられないとか、それはあるけど基本的には「はい。はい。」と言われたことをやるっていうことが大事で。言われたことができなくなったら問題だけどね。
(言われたことをやるために、いろいろと考えているっていうことですか?)
【笠井】考えているっていうかね、映像を見直したりね、振りとかね。そういうことをしっかりやっていくっていうことね。「あなたがいない世界」のことを考えているわけではないですね。
(インタビューを読んでくださっている皆さんへ、瑞丈さんから作品のおすすめのポイントやメッセージがあればお願いします。)
【笠井】俺を見に来いと。俺をピンポイントで(笑)。冗談、ぜひこの作品を見に来てください。素晴らしい女性ダンサーはじめね。でも、なんだろう。やっぱり見に来いと(笑)。もっとまともなことを言った方がいいかな、哲学的なこととか。
三浦さんはね、言葉の人ですから。だから作品も言葉の人なんですよね、作り方が。文章的な作り方をしてるんだなっていつも思うから。作品ってやっぱし、いろんなところを作るでしょ。頭から作っていかないから。例えば、小説だったら頭から書いていくけど、ダンスだから、途中のここの文章を急にやったりとかするから
わかんないんだよね、何を書いているのか。例えば、今向こうで行われているシーンが何の文章を書いているのかわからない。そして、僕がやってるシーンがどういう文章が書かれているのかわからない。それが初めて一緒に並んだ時に一つの物語ができるっていう意味では最後にならないとわからないっていうのがあるね。それはどのダンスもそうなんだけど。比較的三浦さんは言葉の人だから。だからあんまし、このシーンはどういう言葉で表現しているんだろうっていうのは考えないようにしてる。淡々と言われたことを「はい。はい。」ってやっていくようにしてる。三浦さんは秘密主義ですから(笑)。
【三浦】うるさいな(笑)。秘密主義じゃないよ。なんでも聞いて下さい。聞かれたら全部話すよ。
【笠井】私の近い親戚で踊りをやっている人がいるんですよ(笑)。その人が言うにはね「振付家は秘密主義者じゃないとだめ。」なんだって。だから多分そうなんだと思う。振付家がいちいちね「ここはこういうシーンなんですよ」「こういう意味があるんですよ」って説明しちゃだめなんだって。ダンスは。
(ダンサーはそれを求めないっていうことですか?)
【笠井】だから聞かないの。
(本番の日にわかる?)
【笠井】わかんない時もある(笑)。そういう時もあってもいいんじゃないんですか。だからよくわかんないよね。
(よくわからない?)
【笠井】うん、よくわかんないことがいっぱいある。丸ちゃん(この日、リハーサルに参加していた丸山武彦の方を見て)何やってるんだろう。丸ちゃん、本番は出ないのになんでいるんだろうとか。
でもまあ、とにかく見に来いと(笑)、以上!
あと、三浦さんは秘密主義っていうところは強めに書いておいて(笑)。
笠井瑞丈 Mitsutake Kasai
笠井叡に舞踏を、山崎広太にダンスを師事。98年より自作のソロダンスを開始。様々なスタイルのダンスのエッセンスを取り入れながら独自の世界観を持つ作品を発表している。近年はソロだけでなく作品振付や客演でも注目を集めている。平成20年度文化庁新進芸術家海外留学研修員として、09年ニューヨークで1年間研修。10年横浜ソロ×デュオ・コンペティション・プラス審査員特別賞受賞。16年 テロ・サーリネンカンパニーの作品にゲスト出演。
2017年5月 振付笠井叡『花粉革命』を踊る。第12回 日本ダンスフォーラム賞受賞