M-laboratory「Moment of motion」

​野口友紀 × 三浦宏之 対談

M-laboratory 「Moment of motion」の上演を前に出演者と公演のプログラム・ディレクションをつとめる三浦宏之との対談を行います。宮脇有紀に続き二人目の対談は、宮脇同様、初のカンパニー公演への出演となる野口友紀。岡山でのM・L・I M-Lab Institute(現在のM・O・W M-Lab Open class & Workshopの前身)での活動、そして近年は神戸、京都、金沢と各地で精力的にソロでの活動を行う野口と三浦による対談を是非お楽しみ下さい。

三浦:どうぞよろしく。

 

野口:お願いします。

 

三浦:友紀さんは、今年5月のオーディションでM-laboratoryのカンパニーメンバーになったわけですが、初めてカンパニーでやる仕事というか、クリエーションがソロということなのだけど、ソロをやるって言われた時、どう思いましたか?
 

野口:でも、ソロなんじゃないかなっていう予感はしていました。

 

三浦:あ、本当?

 

野口:はい。そういう風に思っていたので、ソロって聞いた時は「そうですよね。」って。

 

三浦:私の中では、新しくメンバーになった人の披露目という訳じゃないですけど、そういうことも少し考えているんですよね。あとは、東京でソロ作品の発表っていう実績を積んでほしいと思っていたり。今、実際に公演に向けてソロを作り始めていると思うのですが、今回は共通のテーマを4人のダンサーに渡しているけど、そこからどういった方法論でクリエーションを進めているのかというところを聞かせてもらえますか?

 

野口:与えられたテーマから、自分が連想というか、イメージするものを頼りに、先にとにかく言葉を連ねていっていたんですけど、このところは割とイメージの方、妄想とは少し違うんですけど、連想するイメージの方の、なんて言ったらいいんですかね...イメージの感覚というのか、そういったところを今探っていっています。文字を起こすこととイメージをすることの2本の軸で、クリエーションを進めていっている感じですかね。

 

三浦:言語化するということと、イメージするということ?

 

野口:そうですね。イメージはすごく曖昧な、曖昧なんだけど映像的なイメージで、テキストの方は文字、言語的なもの。それらを頼りにして、そのどちらからも動きを作っていっているような感じで進めています。

 

三浦:映像のイメージというのは視覚的なイメージということですか?

 

野口:そうですね。目を閉じてても、この辺(頭の上あたりを指し)に映像が流れてくる。

 

三浦:映像っていうとさ、やっぱり画面の中の映像と捉えがちなんだけど、ここら辺(頭の上あたり)でさ、舞台の空間があって人が出てきてみたいなことをイメージするっていうのも、結局はヴィジュアルというか視覚的なイメージだよね。じゃあ、ビジュアルイメージと言語的なもの、その二つから今探りを入れているっていう感じですかね。

 

野口:そうですね。


三浦:その視覚的な、あるいはビジュアルイメージっていうのは具体的にどういうものなのでしょう?からだが動いているとか、動きが先行なのかな?

野口:いや...自分自身が舞台でこういう風に動いてというよりかは、テーマからくる、なんて言うんですかね。全然関係のない風景だったり、うーんなんでしょう...。

 

三浦:物質とか?

野口:物質とか...。

 

三浦:簡単な例で言うと例えばリンゴとか、ナイフとか?そういったことなんでしょうか?

野口:例えばリンゴがあったとして、そのリンゴ自体が常に動いているんですよね。

 

三浦:まあリンゴかどうかはわからないけどね(笑)。

 

野口:(笑)リンゴ的なものが、静止画ではなく動いている。

 

三浦:物質的なものが何か動いているっていうイメージですか?。

 

野口:そうですね。なのでさっき映像っていう言葉が出たんですけど、静止画ではなくて動いているもの。そういったものを見ることによって受ける感覚というか、見て感じることとかを動きの発信元にしてという感じですかね。

 

三浦:自分の内面にあるものを、まず、からだの中で、頭の中で、ヴィジュアル化するっていうのは、内面にある言語化されないものとか、具体化されないもの、かたちにならないもの、そういった内面にある種みたいものを客観視して、果ては身体化して作品にすることによって、自分のからだの外側に出していくような作業だよね。自分の脳内において。

 

野口:そうですね。

 

三浦:なるほどね。イメージから言葉を連ねていくと最初に言っていたと思うんですけど、言葉にするというのはどういったことなんでしょう?具体的に文章にしていくということですか?

野口:そうですね。文章っていうか...短い文章がずっと続いていく感じなので、一遍の小説みたいなことにはならないですけど。単語ほど短くもなく、短いセンテンスの塊がいっぱいあるっていうか。

 

三浦:皆、言語化するっていうことは、結構やってるのかな。ダンスを作るにあたって、文字や言葉にしなくてもダンスは作れるかもしれない。けれどノートにセンテンスを書き連ねて言語化していく作業っていうのは、友紀さんにとってどういった効果をもたらすのでしょうか?

野口:うーん、なんでしょう。「あ、こんなことを私は思っているのか」とか、自分で書いておきながら、自分で後で読んでハッと気づく、気づかせてもらうために書いているんですよね。自分は基本的に文字とか言葉にすることを極力少なくする方だと思っているんですけど、でもとりあえず、落書きみたいにずっと書いています。別に脈絡もないんですけど、後で見返して、全然違うページの言葉と言葉が繋がったりして「あっ!」って後で自分が気付いたりとかするためですかね。取っ散らかった自分の頭をそのままノートに書き出して、客観視して、後で繋がって「おおっ。」てなる。そうやって自分で納得するために。

三浦:自分の内側にあるなんだか訳のわからないものをとりあえず言葉にして、ノートとかに置いていく。それは自分の内側にあったものを外側(ノート)に出していくということじゃない。そして、それを見るというのは内面の客観視なんだよね。ダンサーが作品を作る。要するに振り付けを自分で行いながら、自分で踊る、もしくは他者に振り付けするっていうのは、自分の内側にあるものを外側に出して身体化していくということ。それはやっぱり、自分自身を知るというか、自分の考えを知っていく、自分が何を考えているのか知っていく作業で、そこには必ず個の客観性みたいなものを通らなくちゃいけないのかなぁなんて思ったり。自分の内側にあるものを言語化し客観視して、さらに身体化していく。それがダンスになっていく、というようなことなのかなと。話は変わるんですけど、友紀さんはストリートダンスを始めて、それを続けていく中、あるところでコンテンポラリーダンスをやってみようかなとなったわけじゃない。その時系列の中でなぜストリートダンスを始めようと思ったのか聞かせてもらえますか?

野口:なんでしょう。小学校の時に地域のコミュニティセンターみたいな、公民館みたいな場所で、その当時の流行りの曲とかではない曲、例えばアバ(ABBA)とかで踊ったりするジャズダンス教室があって、そこに行っていたんです。

 

三浦:かなり古い音楽だったんだね。僕でもアバってすこし上の世代の人たちですからね。

 

野口:それぐらいの年代の音楽で踊っていたんですけど、その頃の私は、当時テレビとかで流れている流行の曲で踊りたいなぁと思っていて。地元にあった二つの高校のうち、一つは県内でもダンスが盛んな学校で、そこにたまたま同級生のお姉さんが通っていて「ダンス部すごいよ。」という話を聞いたんです。それで文化祭を見に行って「これだ!これだ!」となり、その高校に行きたいとなって。古い音楽は好きで、50年代とか60年代とかそのぐらいの音楽も好きなんですけど、当時小学生だった私はアバとかではなく、その時流行の曲で単純に踊りたかったっていうだけだったんです。そこから始まって。

 

三浦:高校でそこに行き着いたってことですか?

野口:そうですね。ただまあ、先輩に教えてもらうぐらいのもので、特にストリートの先生をしてる人とかに教えてもらっているわけではなかったので、ほぼ独学みたいな形で。

 

三浦:実際にストリートで踊ってたんですかね。要するにさ、夜、ガラスに自分の姿を写して練習 したりとか。

 

野口:そうですね。高校のダンス部といえども部員が60人ぐらいいたので。大概、文化祭が終わったらやめたりとかするんですけど(笑)。でも多分、常時60人ぐらいはいたと。だから練習場所に入りきらないんですよね。なので、体育館の2階にある小さなスペースで先輩がやって、後輩たちは外で、中庭で練習するっていう(笑)。

 

三浦:その高校の時って、ダンス部で神戸の大会(全日本高校・大学ダンスフェスティバル)とかに出てたの?

野口:出ました。

 

三浦:やっぱりやってるんだね。

 

野口:そこは毎年。

 

三浦:で、高校に入って今流行の踊りがやっと出来るようになったと。

 

野口:そうですね(笑)。当時テレビでDA PUMPがやっている「少年チャンプル」という番組があったんですよね。それでストリートダンスっていうものを見て「これがしたい!」ってなって、高校の時に初めて先輩の元でストリートダンスを始めて、それが楽しくて嬉しくてっていう感じでした。でも高校は神戸の大会にも出ていたんで、創作ダンスもやっていて、ストリートダンスと創作ダンス、二足のわらじっていう感じでやっていましたね。

三浦:創作ダンスもやっていたんだね。少し話を今やっているクリエーションに戻して、今回一つ聞きたいことが。これは今回の他の出演者にも聞きたいことなんだけど、どうやってソロを作ってるんですか?要するに、具体的にスタジオとかに入ってやっている時に、どう作っているのか。さっき、今何をやってるかっていうところで、言葉にしたりとかビジュアルのイメージとかを探ってるとか話を聞いたけど、そういうことではなく、具体的なところでどんな風に作っているのかなと。

 

野口:動きを作るとか?

三浦:動きを作るとか組み立てていくとか。

 

野口:うーんと...なんかその、そこが自分でも不思議だなと思うんですけど。別に作品に使うわけではないんですけど、なんかこの曲を聞くと振り(動き)が出てくるみたいな、そういうイメージの元になるような曲をずっと流しながら、動いていっていますね。で、その曲は何曲かあるんですけど、それを延々と順繰り順繰りかけたり、一曲だけをエンドレスでかけたりして動いていって、その中から動きを見つけていくっていう感じですかね。

 

三浦:結構、音楽に頼ってるんだね。

 

野口:そこは音楽に頼っているんだなって感じです。

 

三浦:それもよくわかります。なんていうんでしょうね。音楽ってやっぱり、すごい力があると思うので。その、ある意味、聴覚から自分の内面を探ろうとしているんだろうなと思うんですよね。聴覚的に自分の内面を探りつつ、それを動きにしていくという感じなんですかね。

 

野口:そうですね。動きをひねりだしていくっていうか。

 

三浦:自分がその音楽によって動かされて、出てきた動きをレコードしていくような感じなのかな?

野口:そうですね。

 

三浦:今この曲がいいなとか動きやすいなとか、無意識に思っていたとしても音楽の選定の基準みたいなものって自分でわかる?要するに、今回あるテーマがあって、それとその音楽の選定に関係性があるのか、ないのか。

 

野口:あー、あります。多分あると思います。でも、今回の曲リストのうちの一つは今年6月に京都でソロ作品を踊ったんですけど、それを作った時のリストにも載せていたものなんです。でも別にその時のソロは今回の作品とは全く関係性がないんですけど...だから必ずしもそのテーマから出てきたっていうわけでもないかもしれない...でもテーマと全く関係がないこともないんですよね。やっぱりイメージでこれがいいなって聞いててなるんですよね。

三浦:これはまあ、前回の宮脇有紀さんの対談の時にも思ったことなんですけど「ソロ作品を皆どうやって作ってるんだろう。」っていう思いがやっぱりあって、どういう作り方が正しいとか、悪いとか、間違ってるとかということでは全くなくてさ。でも、何かを作りだす発端になるものが、その人のどこにあるのかっていうことにやっぱり興味があるんですよね。それを聞くことってなかなかできないですけど、どうやって創作していくかっていうことを共有していくことで、なんとなく見えてくるものがあるんじゃないかなと思って聞いているわけなんです。さらに今回タイトル先行じゃないですか?友紀さん的にはタイトル先行というのはどうですか?

 

野口:その、作品によりますかね。6月の京都での作品は本番3日前くらいにタイトルを決めたんですよ。こういうことをやろうっていうテーマ自体は初めに決まって、作っているうちにそれが全然違うものになるっていうことは今までないんですけど、ただタイトルは、この前の京都での作品は3日前につけたというか...。そのもう一つ前に神戸(ダンスの天地vol.01)でやったやつは、クリエーション途中でタイトルが出てきたりして。なんかその「ぱっ!」て「これだ!」っていう感じでいつもタイトルは決まるんですよね。今回の「Moment of motion」ではタイトル先行という指示があったので、それを受けて、すぐ「これだ!」っていうのが出てきて。もし決まらなければタイトルを(仮)とかに多分してたと思うんですけど。

 

三浦:感覚的でいいっていうことなんだろうね。そこでさ、なんか無理にひねりだして考えて「まあこれでいいか」っていう時って、往々にして違うんだよ。「これだ!」ってなった時にはタイトル先行で作り出してもいいのかなと僕は思ってるんです。

 

野口:今回は割と早い段階でタイトルが出てきましたね。でも実際は作品によりますかね。

 

三浦:実際タイトルってなんなんだって話なんでね。作品を作るにあたって。絵を描く人の作品には「無題」っていうタイトルはいっぱいあるし、クラシック音楽でもさ「短調第何番」っていう記号じゃないですか。例えば「月光」や「運命」とかってついているのも、後の人達が「これは月光。」だ「運命だ。」とかって付ける訳で。基本的にタイトルっていうのは番号でもいいんですよね。でもまあタイトルは作品の顔というか、わかりやすくお客さんに提示するにあたっては大事なものなのかなと思いますね。最後はこの対談を読んでくれている読者に向けて、よろしくどうぞ。

 

野口:見に来てくださいっていうことしかない(笑)。これまで何個かソロを作ってきて、東京やっとという感じなので。

 

三浦:初めての東京でのソロ。

 

野口:そうですね。たくさん人がいる東京でやるので、たくさんの方に来ていただきたいというのと、多分これまで作ってきた作品と違った感じになるのではないかなと思うので、これまで私の作品を見てくださった方にも見にきていただきたいと思います。

Copyright © M-laboratory  and photographers all rights  are reserved.

  • Facebookの社会的なアイコン
  • Twitterの社会のアイコン
This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now