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Works-M Vol.9 「未だ来ぬ時へと過ぎ去るからだ」

​上村なおかインタビュー

3月31日(土)、4月1日(日)上演、Works-M Vol.9「未だ来ぬ時へと過ぎ去るからだ」。

Works-M Vol.9「未だ来ぬ時へと過ぎ去るからだ」小屋入りから3日が経ちました。今回の作品に出演する上村なおかさんにお話をお伺いしました。

【今回の作品、直前までご自身の本番があったということで小屋入りからの合流となりましたが、合流から3日が経ちいかがでしょうか?】

 

 合流前は、三浦さんから「とにかく、あとはなおかさんの隙間だけが空いています。」と聞いていたこともあって、やばい大変だ!(笑)と思ってました。皆さんの稽古の様子とかもFacebookとかで見ていて、これはかなり心していかねばと思って、覚悟、覚悟だけはすごい決めてきて、じゃあ具体的に準備してきたかというと三浦さんからいただいたシーンのこととかは、まだ曖昧な状態でバシッと決まった状態では持ってきてなくて、でもなんか覚悟だけは持ってきた感じはありますね。

 そのお陰で、初日に思ったよりいろんなことが覚えられて、自分でも「お、なんか集中してやるといいんだな。入ってき方が違うんだな。」と思って。自分でもそれには驚いて。なんか最近物覚えがよくないので(笑)、すごく覚えるのに時間かかるかなとか思っていたんですけど。多分、もうそこまでの流れをちゃんと皆さんが作っててくれてからそのお陰もあると思います。なんか、皆さんも小屋入り初日、初めて作品を会場で踊るのにそんな感じをさせていなくて。稽古に来たというよりも、本番に向かうという感じで向かいましたね。本番まで1週間なので(笑)。

 

(そうですよね。合流6日後には本番ですもの。)

 

 こういうがっつりとした1本ものの作品を1週間でっていうのは...クオリアの庭(Works-M Vol.7 2016年)に出演した時は、作品が各地でプログレスを経ていく中で作品が出来上がっていく途中に合流という形だったので、今回みたいに作り上げられた中にガッと入っていくのは、気合を入れねばと(笑)。

 

【Works-Mの企画等でも、なおかさんの作品を岡山で上演いただいていますが、今回のWorks-M Vol.9では振付・出演という形で参加いただいています。自身の作品を上演する時と、今回のような形だと作品に向かう中で違いみたいなことはあるのでしょうか?】

 

 岡山では、自分の作品以外に出演したりするのは、具体的には三浦さんの作品にしか出演したことがなくて...三浦さんの作品には昔からいくつも出演させてもらっていて、その度に三浦さんの作品の世界っていうか作り方っていうのは思い出すんです。三浦さんの作品はフィジカルだけじゃなくて感覚の部分でも研ぎ澄まさせておかないといけないので。

 あとやっぱり、その、これまで三浦さんが積み重ねられてきた時間。他の出演者の皆さん(M・L・I M-Lab Institute 2017年度メンバー)が岡山で三浦さんとダンスを通してがっつり過ごされてきた方達なので、そういう、ここで過ごしてきた時間と一緒にやらせてもらえるっていう喜びというかリスペクトがあります。M・L ・Iの皆さんがやってきたように、同じ人について学ぶっていうことはやれそうでやれないことなので、だから皆さんすごいなと思います。

 

【なおかさんが岡山で初めて踊られた場所が、今回の会場となる上之町會舘と聞いたのですが。】

 

 そうですね。今回の岡山滞在では上之町會舘で私が初めて踊るきっかけを作っててくれてる方にもお会いできたんです。その当時は、ものすごい勢いでその方が岡山でのダンス企画を立てられていて、そこで何度か呼んでいただいて。(ご自身の作品アーカイブを見ながら)2004年の12月が最初ですね、そこから本当にいろいろさせていただいてますね。場所も上之町會舘だけではなく様々な場所で。しかも、その場所に縛られずに、踊りで考えている決まりごととかに全然捉われずにやらせてもらいました。振り返ると、いわゆるホールじゃないところで踊らせてもらう機会が多くて。夜明けの古いビルの屋上で踊ったりとか(笑)。

 

(上之町會舘のホールの様々変遷があったと聞きました。)

 

 そうですね、床が砂だったりとか(笑)。元あった建物が今の形になるまでに、いろいろな変遷があって。

 

【今回の作品も、会場の特性を生かしながら舞台面の作り込みが進んでいますね。是非こちらも楽しみにしていただきたい見どころの一つです。今日(インタビュー時)小屋入りから本番までの折り返し地点で、衣装をつけての全通しも行われたのですが、初日からここまでいかがですか?】

 

 一先ず、ここまでこれてよかったというか(笑)。私が作品の中に入ったことで、全体の流れの微調整が行われたので、今日はまだデッサンみたいな感じでしたね。まだ、からだまでぐっと降りてきていない感じなので、これを見せれるまでに、踊りにできるまでに、どうやっていくかが残り2日のリハーサルの勝負どころかなと。

 

(Works-Mとしての作品ではVol.7の「クオリアの庭」以来にの2度目の出演になりますね。)

 

 そうですね。去年の秋頃、色々なことをメールでやりとりしている時、ある日、ふっと出演の依頼が。日程に関して、笠井瑞丈×上村なおか主催の「ダンス現在」の次回日程のこともあったのだけど、それとは重ならず。時期的には直前に本番が立て続けに2つあったのだけど...こう、すっきりした状態でこれそうな1週間だったので。そういう時期でよかったな思っています。

 

(作品に関して合流までの間、事前に三浦さんとはお話されたりしていたのですか?)

 

 テキストは今年の1月に来た時(Works-M experiment space 上村なおかダブルビル公演で来岡)にいただいていながら、じっくり読み出したのはもらってすぐではなかったんだけど。

 

(今回出演者に渡されたテキストは、最初に読んだ時とリハーサルが進んでから読んだ時と、読後の感想が変化していく感じを受けるのですが。)

 

 そうですね。「ああ、このシーンはここか!」みたいなね。わりと最近になってから、私が担当するソロのシーンのことを聞いて(笑)。私の中では最近だけど、三浦さんの中では決まっていたことなんだろうけど。

 

(今回のソロシーンはどういった感じでクリエーションが進んでいるんですか?)

 

 三浦さんからは、今年1月に踊ったソロ作品「Life」のような手法でとお話ししていただいて。テキストが主体になって、その中の言葉から動きが生まれていくんですけど。ただ「Life」の時の言葉は完全に入っているんだけど、今回のはまだ。なんか訥々と、でもなんかすごく、わーっと動くっていう感じでもなくて。

 なんせ、とにかく白い、白くて、すごく静かなイメージがあって。どうしたらいいんだろうって思っています。テキスト全体を読んで、なんかすごい、一見終わりっぽいんだけど希望に満ちている感じがして、「作品を作ることは未来につながることなんだ」って三浦さんの口から聞いて、なんかそれが全体の、作品のことだけじゃなくて、自分がやっていることの支えになるっていうか、あらためて勇気づけられました。「終わり」っていう面から、そこから目を背けないというか。でも、すごく未来に向かってるっていう感じがして、いろんなことがもちろん終わりを同時に迎えたりしているのかもしれないけど。三浦さんが岡山で過ごしてきた時間とか思いとか伝わってきて、センチメンタルな意味じゃなくて感じるので、それがこの作品を踊る糧になるというか、いい現場だなと思いますね。

 やっぱりね、世界の事を考えているっていうか、今在る世界だけじゃなくて、すべての世界を捕まえていっている感じ。

 

【「未だ来ぬ時へと過ぎ去るからだ」というタイトルからも感じるように、この作品において時間というのが一つキーワードとしてあると思うのですが、その辺りに関してはいかがですか?】

 

 そうですね。過去にも未来にも向かっている感じがしていて、ここにからだがあることがすでに驚異的なことで。そのからだもある種の純化される感じもあったりして、そこを行ったり来たりして純化されて解体されて、そこにまた受肉していくような。最初のシーンもその辺と関係あるのかな、とか。過去と未来、等しくいいっていう感じ。

 

【今回は振付のシーンも多くありますが、振付を踊るということに対して、なおかさんの中で思われたり感じたりされていることはありますか?】

 

 目指し続けないとしょぼくなっていくからね。ぬるくならずにいつも切り口が新鮮な感じで。振りを自分に引き寄せちゃって、引き寄せちゃうっていうか体ってそういう傾向があるので。そこからどんどん離していくっていうか。まず、身体的には自分の身体をコントロールできるような訓練をするじゃないですか。もちろん、そういう技術的なことは必要なんだけど、でもそこをもう一回はみ出すみたいなことをしないと、踊りにはならない。どうやったら踊りになるかっていうことを問い続けないといけない。

 

(ここからあと2日で本番を迎えますが、今の心境は。)

 

 ここからは、なんかこうちゃんと通りをよくしておきたいっていうことがあって。自分のからだだけで完結しようとしない方が今回は特に良さそうなので。自分のからだだけで完結するっていうものがほぼ無いっていう。それが舞台での居方につながるのかな。頭で考えていることをからだの中で完結させるんじゃなく、頭がかぱっと開いているような、からだが開いていくような、からだが拡大していくような感覚。

 もちろん収縮もしていくんだけど、収縮していく時も、それは日常の身体ではなく、かつ自分じゃない人やからだと共通のものがあって、その共通のものに向かってクリエーションしていく。そういうことができるっていうことは相当幸せなことですね。その人の良さだけじゃないものが出てくるので。そこはすごく自信を持って誇りを持っていいんじゃないですか。私が言うのもアレですけど(笑)。

 

【公演は3月31日(土)4月1日(日)二日間2ステージとなっています。おかげさまで31日の回は完売となりました。このインタビューを読んでいただいている皆様にメッセージがあれば。】

 

 なんかやっぱり果てしないことなので。果てしなく求めていきたいと思います。それを一緒にやっている人がいるっていう幸せ。一緒に向かえている人がいて、そこに立ち会ってくれる人がいてありがたいなと思います。尊いことだと思います。

 それを、しかと刻んでいきたいなと思います。

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